[電波のとどく時空にいます 感想]タイムスリップの緊迫感とスマホの優位性が絶妙[漫画]
電波のとどく時空にいます1巻の表紙

引用:電波のとどく時空にいます1巻より

[電波のとどく時空にいます 感想]タイムスリップの緊迫感とスマホの優位性が絶妙[漫画]

あらすじ

昔は仲良しだった陰キャの駒田 司と陽キャの遠藤 颯人は互いの住む世界の違いから、ある出来事をきっかけに疎遠になってしまう。

そんなある日、他人からの頼まれ事で久しぶりに遠藤に会いにいく羽目になってしまった駒田。
気まずさを覚えつつも仕方なく彼の家に向かう道中で、謎の人物から逃げる遠藤を見かけ、追いかける。

遠藤の姿を見失った駒田は無事を確かめるためにスマホへと電話をかけたが、何やら彼の見ている景色がおかしいことに気がつく。

同じ場所にいる筈の彼からの情報とスマホからの映像から、驚くべきことに遠藤は時空を越え別の時代へとタイムスリップしてしまったのだった。

そんな彼を救うべく、二人の時間を超越した協力関係が始まる。

果たして遠藤は無事に現代へ帰ってこられるのか、何故こんな不可思議な出来事に巻き込まれてしまったのか。

といった導入のタイムスリップ系漫画。

作品、作者情報

2025年11月8日現在、既刊2巻。コミックバンチKaiにて連載中。

コミックバンチKai公式サイトにて第1話の無料試し読みも可能。

作者は「今村 翠」という方で、過去に「るるひかる」などを連載していた。

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前作の空気感が好きで本作も読み始めました。

ここが良かった!

1.時空を越えた協力関係という構図

まず、なんと言っても面白かったのは現代と過去、それぞれの時間軸に置かれた二人がスマホを通じて時空を越えながら協力していくという構図だったな。

単純にタイムスリップした先で生き残るというだけじゃなく、スマホだけは使え、現代と限定的ではあるものの連絡を取れるというもどかしさと優位性の中間具合が読んでいて程よい面白さだったね。

通信が出来る故の安心感やある種の万能感はあるものの、バッテリー問題や電波がどこまでの範囲で有効なのか、そして時代背景的に怪しまれるなどの問題も山積みで、それに対して遠藤側がどのように対処していくのか、という点もハラハラとさせられる。
タイムスリップしてしまった遠藤 颯人に現在判明している情報を伝えている駒田 司とそれにマイクを叩く回数で返答している場面

引用:電波のとどく時空にいます1巻より

スマホのメリットと問題点の扱い方が楽しみ

1巻の段階ではあまりにも急転直下な状況かつ危機的な状況であるため、そこまで大きな掘り下げはされていないもののスマホ関連のリスクが今後どう深掘りされていくのかも気になる所。

あとは本作の軸であるスマホで連絡を取れるという優位性が、遠藤の置かれた1590年という時代においてどのように働いてくるのかもかなり気になるね。

全体的にタイムスリップと危機的状況とスマホを使って通信が可能という優位性がバランスよく描かれていてグッと物語に惹き込まれた。

2.時代設定や制限時間の緊張感も絶妙

本作においてタイムスリップ先の時代設定や制限時間の設定も絶妙だと思ったな。

時代としては上でも少し触れたように1590年。
場所としては鏡之井や閼伽崎城という所で設定としては北条にゆかりのある派閥ということらしい。

歴史にはあまり明るくないのでこの辺りの設定がどこまで史実に基づいているのかは分からないけど、江戸時代の幕開け約10年前というある意味戦国時代の過渡期とも言える激動の時代というのがまず面白かったな。

年代的にも現代人の言葉や文化が全く伝わらなくも無く、かといって平穏ではないため現代とは違った些細なやり取りが自分の命に直結するという緊張感、そして時代背景的に多少ブラックボックスが存在する立場に置かれるという所も絶妙だと思ったな。
近いうちに閼伽崎城が戦場になるという予想を遠藤 颯人に告げる越渡の方

引用:電波のとどく時空にいます1巻より

時代背景による緊張感にもグッと惹き込まれた

なので各々のやり取りが受け入れられる部分もあれば違和感があったりするところも丁度良かった。

加えて、制限時間としての緊張感が用意されている所も物語展開としてグッと惹き込まれた部分だったな。

かなり逼迫している状況の中、少ない情報やリソースでどう最適解を見出していくのか、というのはヒリヒリとしていてハラハラドキドキさせられたね。

物語としてはある意味で終わりが近い形で始まってはいるけど、ここからどう話が展開し、遠藤たちがタイムスリップという状況を乗り越えていくのかは凄く楽しみだな。

あと個人的には巻末のオマケで扱っているトイレ問題は結構面白かった。

あの時代のトイレ事情は厠やぼっとん汲み取り式といった知識しか無かったけど、色々と他にも様式があったり、現代人の衛生観念だと色々とキツかったりといった要素がぼやかしながらも描かれているのは非常に興味深く面白かったな。

本編だけでも色々と緻密さが必要で描くのが大変だとは思うけど、こういう時代背景にまつわる豆知識や深掘り部分は今後もオマケとして続けて欲しい限りだね。

3.登場人物の関係性ややり取りの魅力

登場人物たちも全員が程よい関係性や個性で読んでいて面白かったな。
特に主人公である二人が性格的に陰陽がはっきりしているのはかなり読み易さに寄与していたと思う。

まずは主人公の1人駒田 司。
作中ではいわゆる陰側。

勉強はできるけど運動は苦手なタイプ。

色々と目立つタイプの遠藤と比べられたりして過去にちょっと辛い目にもあってる。
でも根は面倒見も含め良い奴ではある。

歴史シミュレーション系のゲームが好きらしく、今回の出来事も一瞬その延長線と捉えて少しワクワクしているという狂気性もあるけど。

次に陽側の主人公の遠藤 颯人。
スポーツ万能でいわゆるクラスの人気者。

駒田曰く天然の人タラシということらしい。

ただ、その圧倒的八方美人さが逆に人間味を感じず恐ろしくもあったようでそのことが二人の関係性を分かつ一因になっていた模様。

今回の事件に限っていえば彼のこの特性は少なくとも1巻の段階では優位に働いている気がしたのは面白い。

そして本作におけるキーパーソンの一人である地域の歴史研究者の矢田部 俊克。

元々この地域の歴史を調べていた事もあってかなりの事情通。

どこまで彼の持っている知識が役立つのか、そしてそもそもどこまでの知識が正しく役立つのか、も含めて気になる存在。
現代において駒田 司の発言に違和感を覚えた矢田部 俊克が彼に理由を問い詰めている場面

引用:電波のとどく時空にいます1巻より

地域の歴史家の彼の存在がどう作用するのか

そして過去で遠藤が出会う越渡の方の槇や槍の名手で城主の岡田照周、遠藤の世話を任された相原与一郎の存在などなど。

今のところはそれぞれのバックボーンについてはそれほど深掘りはされていないものの、舞台設定から考えると情を感じ始めたらそういう方面にも色々とは波乱は予感させられるね。

もちろん、今後は敵方の主要人物なんかも出てくるんだろうし、その辺りもどういう形で深掘りされていくのかは気になるところだな。

総評

タイムスリップしてしまうという危機的状況の中でスマホだけは通じるという良し悪しの落差の扱い方が絶妙だったな。

スマホという文明の利器のおかげで無双出来るのかと思いきや、時代背景のおかげで緊迫感があってグッと物語展開に引き込まれるし、時代設定や制限時間の作り方も程よかった。

主人公たちの関係性やキャラの立ち位置が割とシンプルな構図なのも読み易いと思ったしね。

まだまだ物語は始まったばかりなので、ここからスマホや遠隔でのやり取りであることがどういう風に活きてくるのか、逆にスマホを持っているという優位性がどう足を引っ張ってくるのか、ということも含めて続きを読むのが楽しみだね。

そんな、絶妙な緊迫感と設定が面白いタイムスリップもの。
気になった方はぜひ読んでみてほしい。

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