[頂のリヴィーツァ 感想]犯罪者だらけの施設で行われる血生臭い宝探しサスペンス[漫画]
頂のリヴィーツァ1巻の表紙

引用:頂のリヴィーツァ1巻より

[頂のリヴィーツァ 感想]犯罪者だらけの施設で行われる血生臭い宝探しサスペンス[漫画]

あらすじ

犯罪行為を行った少女たちが送られる施設、無垢の園。

そこでとある依頼をこなすために送り込まれたシキブ・ハナオリという少女。

そこでは品行方正を求められるが表の顔の他に規則の隙間をぬった犯罪行為が横行するディストピアでもあった。

次から次へと押し寄せるアクシデントや収監されている受刑者の異常性がシキブを襲う中、果たして依頼を完遂させる事が出来るのか。

といった導入の犯罪少女ディストピア系サスペンス。

作品、作者情報

2024年7月19日現在、既刊2巻。コミックDAYSにて連載中。



コミックDAYS公式サイトにて第1話と第2話の無料試し読みも可能。

作者は「山座一心」という方で過去に「潰国のユリウス」等を連載していた。

元々は「リヴィーツァ家の家庭教師」という同人作品として発表されていたものを商業用に再編、調整したのが本作という事らしい。

ちなみに僕自身そちらは未読。

ここが良かった!

1.様々な謎含めサスペンスの緊張感高め

まず引き込まれたのは何と言っても常に死が付きまとう世界観と謎が謎を呼ぶ物語展開だったな。

舞台設定としては魔法が使えたりする少しファンタジーな世界。

宝探しと、とある依頼の達成の為に犯罪者少女たちが隔離されている施設、無垢の園へと潜入するシキブ。

素性を隠し宝と人探しをするシキブに様々な困難が待ち受けていて血なまぐさい展開が連続していく。

この全体的に先の読めないヒリヒリとした空気感と高いスピード感でグイグイと読み進められてしまう面白さがあったんだよね。

絵柄の可愛らしさや日常風景のほのぼのさもしっかりと描かれていて、そこから急転直下にシリアスな方向に内容が進んでいくテンポ感も凄く良かった。
無垢の園の誰が宝の在り処を知っているか分からないから迂闊に殺せないとアリスに語るシキブ

引用:頂のリヴィーツァ1巻より

シキブ達が追う宝の謎。どう展開していくのか

1巻の段階ではとある宝と人探しが軸になっていて、宝を狙う別の角度で潜入してきた勢力との小競り合い、そして宝自体を盗んだ張本人とのやり取りなどがメイン。

目が離せない謎が謎を呼ぶ展開は緊張感の連続。

そして1巻の巻末の衝撃的な展開を含め2巻以降、さらに物語は加速し複雑さを増し入り組んでいく。

そんな物語展開の中で誰が敵で誰が味方なのか分からなくなっていく空気感も凄くハラハラして面白かったな。

まだまだ世界観的に明かされていない謎は多く、城主ハリエットの存在や、シキブの師匠の存在、そしてキラ教とは何なのか、等々いわゆる本筋以外の部分も魅力的な謎が散りばめられていて今後の種明かしが気になる。

続きを読むのが待ち遠しくなったね。

2.無垢の園のディストピアさも秀逸

世界観、サスペンス的な内容の面白さ、緊張感もさることながら無垢の園内部におけるディストピア感も本作の見どころの1つだったな。

収監されているのが年若い少女達とはいえ犯罪者たちが収監されている施設だけあってルールは当然表面上のもの。

それぞれの派閥が裏ではやりたい放題やっている感じがディストピア的な空気感と緊張感を高めていて面白かったんだよね。

本作の1つの肝となっている要素として、施設内の全てが犯罪者たち本人で運営されていて、掃除や食糧関係、果ては警察に至るまで各々が行っているというものがあるんだけど、この辺のパワーバランスの変化も波乱を呼んでより一層物語が面白くなっていく。

世界観に説得力を持たせるための刑罰といった描写にも手抜きがなく、グロテスクに感じたり痛々しさを感じる場面も多々あるけど、そういうリアリティの高さが作品としての魅力をある意味で高めているとも言える。
刑罰中に頸部や腋窩など人体の急所に偶然当たってしまう事もあるかもしれないとシキブを脅すヨハンナ

引用:頂のリヴィーツァ1巻より

ディストピアとしての緊張感の高さも魅力だね

個人的には大分見ていて心が傷んだ。

刑罰を行う側もされる側も犯罪者ではあるが故に更にもう一段階複雑に心の置き所が難しい。

この辺りのディストピアな世界観、設定も非常に物語の本筋の緊張感に密接に寄与していて非常に面白かった部分だったね。

3.犯罪者だらけの登場人物にも魅力満載

全員が全員漏れなく犯罪者ということもあってクセと個性が満載で見ている分には凄く魅力的に映るというのも本作の面白かった部分だったな。

まず主人公にあたるシキブ・ハナオリ。
とある任務のためにこの施設に潜入。
生まれつき罪悪感が無いらしく、目的の為に人を殺しても何とも思っていないらしい。

ただこの地獄の様なディストピアにおいて、魔法の能力も素の戦闘能力も高く、彼女が活躍する場面は割と安心して見ていられるのがなんとも心強い。

本来は不可能に近いはずの魔具無しで魔法の行使が出来る。

施設の外では師匠と呼ばれる存在が待機しているらしく、時々サインを送ったりしている。 こんな危険過ぎる彼女が獣に落ち切らず、人としての状態を保っていられるのは彼のおかげだったりするのだろうか。

ルームメイトの1人シャルロータ・リヴィーツァ。
本作のタイトルにもなっている位に重要人物の1人。

元々は貴族だったらしいけどとある事件により没落。
こんな底の底まで落ちこぼれるという散々な人生。

立ち居振る舞いといい漂うお嬢様感はこの場所においては異質だけどちょっとツンと凛が見え隠れする雰囲気は個人的に好き。

とある目的の為にこの園に留まっている部分もあるんだけど、彼女の目的が達成できるのかも注目ポイントだな。

あと単純に本作のタイトルにも入っている上、同人作品時代のタイトルもリヴィーツァ家の家庭教師らしいのでここがどういう形で回収されるのかも気になる所だね。

同じくルームメイトのアリス・ジャバウォック。
やたらと演劇風な言動をするが一応理由があって、本人曰く痛みを感じない事に起因しているらしい。

少しでも普通の人間に近づくために様々な人間を演じる。
という心情は結構健気で応援したくなるバックボーンではある。

その特性故に苦難が絶えない過去であった事も明かされるし。

ただ、後々その性質故に厄介な奴に目をつけられる事になったりもする。
その辺りがどういう風に展開していくのかも気になるね。

最後のルームメイトはセフィロ。
キラ教教皇の娘らしい。
それ故に存在が煙たがられてはいるけどVIP扱い。

加えて1巻の段階ではシキブと並ぶかそれ以上の魔力の天才らしい。
ただ人の尿に異様な興味を持つ変態という残念な一面も。

他人がトイレに行くとその音を聞きに行くらしい。
シキブととある盟約を結んだ際に尿を拭いた紙を小さい宝箱にしまっている描写があったりと筋金入り。

尿の良さを知らしめるためにスープの鍋に放尿した時は一周回って笑ってしまった。
いや、実際現場に遭遇したら全く笑い事じゃないんだろうけど。

その辺の尿への異常な執着や出自に関連する事など、1巻の段階ではバックボーンに謎の多い人物。

今後の掘り下げがかなり興味深い人物の一人だな。
シキブのおしっこが良い音だと本人に話しかけ、人を殺すところも見ていたと興奮気味に語るセフィロ

引用:頂のリヴィーツァ1巻より

とてつもない変態性だけどどこか目が離せない

その他にもこの無垢の園には様々な人物が登場。
流石に犯罪者が収監されている施設だけあって、人物の数は多い。

しかもその上、主要人物同様にどいつもこいつもクセの強い奴らで根っからの邪悪な奴も多いけど目が離せない不思議な魅力がある連中も多いというのが良い意味で悩ましい作品でもあるんだよね。

特にカティはとんでもない悪意の塊。
あと、一見まともそうに見えるヨハンナやマリーベルも一皮剥けばかなり狂気的だったりするし。

まだまだ裏のありそうな登場人物も多くここからどういう形で掘り下げられていくのかは読むのが楽しみだけど怖くもあるね。

総評

緊張感の高い世界観、設定とそれを上手に見せるようなスピード感、テンポ感でグイグイと作品へ引き込まれていったな。

絵柄の可愛らしさと内容のダークさのギャップも個人的には結構刺さった。
場合によって結構キツイシーンもあったりしたけど。

登場人物もクセの強い連中が多く、バックボーンが謎だらけな感じもある意味で目が離せなくなるような魅力が満載で面白かったな。

セフィロの尿好きさには若干引いたりもしたけど。

まだまだ物語としては序盤っぽいしこの辺のシリアスさ狂気さがどこまでヒートアップしていくのかは恐ろしいながらも怖いもの見たさが勝つワクワク感もあるんだよね。

全体的に先の読めない展開で続きが気になる作品。
どういう着地点に向かっていくのか今後が楽しみ。

そんな、犯罪者だらけの更生施設で行われる血生臭い宝探しサスペンス。

気になった方はぜひ読んでみてほしい。